フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 顔を上げると、穏やかな微笑みがあった。

「いいえ……エドの心臓の音が聞こえて」
「私の?」
「それが心地よくて、つい。──それより、まだなにかお話があったのですか?」
 
 デイジーたちに訊かれたら困る話なのかしら。少し不安になると、大きな手が頬に触れてきた。

「いや、もう少し一緒にいたかっただけというか」
「一緒にって……その、それって」

 頬を撫でられ、私を見つめる瞳に揺れる優しさが見えた。
 鼓動が跳ね、全身が熱をもった。

 まだベッドを共にしていない私たち。
 そのタイミングはいつがいいのかと考えないこともない。むしろ最近は、一人のベッドに横たわりながら、エドワード様にもらったブローチを握って眠るばかりだった。
 頬を撫でる温かい指に、不安と期待が積み重なる。

「別になにもしない。ただ、もう少しこうしていたいと思ってな」

 寄り添うエドワード様に抱き締められ、胸の高鳴りが落ち着かない。

「リリアナ……私の妻になったことを後悔はしていないか?」
「突然、なんの話ですか?」
< 177 / 275 >

この作品をシェア

pagetop