フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 テーブルには、美しくカットされた果物やケーキや焼き菓子も次々に並べられる。
 一見すれば、なんの変哲もないお茶会だけど、なにかが違う。

「お口に合うといいのだけど」

 含み笑いをするヴィアトリス王妃は、カップを優雅な手つきで持ち上げ、香りを楽しむ。それに習うように、私もカップを口元へと近づけた。

 甘い香りが鼻腔から胸の奥に入り込んできた。

「どうかしら?」
「……とても芳醇な香りにございます」
「素敵でしょ。蜂蜜ともよく合うのよ」

 とろりとした蜂蜜をカップに垂らし、スプーンで静かにかき混ぜる。すると、ディアナも王妃のまねをして紅茶を一口飲むと、うっとりとした表情を浮かべて「美味しゅうございます」といった。

 この甘い香り、どこかで嗅いだことがある気がする。それに、これを飲んではいけないような気がする。
 胸のブローチにそっと触れ、カップを受け皿に戻した。

 カップを下ろした私を見て、ヴィアトリス王妃は微笑みを浮かべながら「お口に合わなかったかしら?」と訊ねた。
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