フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「兄上、話しというのは」
「まずは茶を飲もう。ブルーベリーパイとハーブティーを用意させた」
「コーヒー好きな兄上がハーブティーとは、珍しいですね」
「なに。たまには花で癒されるのもいいだろう?」

 軽く笑ったロベルト王は、白磁のティーセットが並ぶ窓側の席へと私たちを招いた。

 勧められるままに椅子に腰を下ろすと、大きな窓の向こうで木々がさわさわと揺れた。
 ここから眺める景色も、とても美しい。ちらちらと揺れる黄色はヒマワリね。

「失礼します」といった侍女が、私のティーカップにハーブティーを注いだ。すると、甘く優しい香りがふわりと立ち上った。レモンのような爽やかさもあるわ。この香り、どこかで──考えていると、エドワード様が「エルダーフラワーですか?」と静かに訊ねた。

 ハッとした。
 そうだ。つい数日前、庭で見上げた花木の香りだわ。

「ああ。エルダーフラワーにレモングラスとレモンピールを合わせたそうだ。癒される香りだろう?」

 少し寂しい顔をして、ロベルト王が笑う。
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