フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~

最終話 フェルナンドの薔薇を散らせるのは王弟殿下だけです

 そっと瞳を閉じると、煌びやかな衣装を身にまとった貴族令嬢たちが紳士の手を取り、そのドレスを翻して踊った舞踏会が蘇る。
 まだ、耳の奥で美しい楽団の音楽が流れているような気がするわ。

 初めての夜会は想像していた以上に美しく、温かく、これからアルヴェリオンで生きていく私に勇気を与えてくれた。

 あんなに、結婚が心配だったのに不思議ね。
 大切な友人ができるなんて思ってもいなかった。
 頼れる人たちの笑顔を思い浮かべながら、夜空を見上げると、チカチカと星々が瞬いた。

「アルヴェリオンの夜は静かで美しいわ……」

 夜風を感じながら思いを馳せていると、私の名を呼ぶ声がした。

 振り返ると、グラスを二つ持ったエドワード様が寝室に入ってきたところだった。

「寒くはないか?」
「ええ、むしろ高揚した心に心地よい風です」

 差し出されたグラスから、ほわっと果物とワインの甘い香りが湯気と一緒に立ち上った。

「これは?」
「ホットワインだ。温まるぞ」
「……お酒は苦手です」
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