フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 驚いて振り返ると、その顔色は焦りに青くなっている。

「汚れが残っているとは気付きませんでした」
「いいのよ。急に下級貴族の装いをといったのは、私だし」
「……明日までに、そちらのリボンもお取り替えを」
「このくらい平気よ。それに、新品よりもそれっぽく見えるわ」

 リボンを顎下で結び、用意されていた靴に足を通す。「どうかしら?」と問いながら振り替えると、デイジーが拍手をして大喜びした。

「……──様」
「リリアナ様、素敵です!!」

 サフィアが唇を震わせ、誰かの名を呟いたように聞こえた。だけど、すぐに明るいデイジーの声にかき消された。

 今、エリザ様っていわなかった?

「エドワード様も、きっと喜ばれますね!」
「……別に、喜ばせるために着るわけじゃなくて、お忍びだからよ」
「でも、リリアナ様の愛らしさに目を奪われますよ!」
「それじゃ、目立ってしまうわ」

 頬が熱くなり、つんっとしながら「下級貴族に見えるかしら?」といってサフィアを見ると、彼女は微かに目を潤ませていた。
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