フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「この胸の音は、私のものでしょうか?」
「……さあ、どうだろうね」

 しっかりと肩を抱く手から温もりが伝わってくる。

 他人の手のぬくもりが心地いいと思うなんて、初めてかもしれない。こんなに近しい人なんていなかったし。母に手を引かれて歩いただって遠い昔だわ。

 ああ、でも……夢の中で私の手を引いてくれた方がいたわ。

 あれはデイジーがいうように、エドワード様と出逢う予兆だったのかもしれないわね。

 エドワード様の手の温もりに早鐘を打つ鼓動を、少しだけ心地よく感じながら、馬車の揺れに身を任せた。

 しばらくして、馬車は立派な屋敷が立て並ぶ区画にやって来た。その中に小さなお城、いいえ、要塞を思わせるような塀で覆われた荘厳な建物を見つけた。

「エドワード様、あの建物はなんでしょうか?」
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