フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 エドワード様の手を少し強く握りしめると、若葉色の瞳が見開かれた。

「では、エドワード様も、私になんでもお話しください。お気持ちが知りたいです」
「──ははっ、そうだな。少しずつ、お互いを知っていこう」

 私を見つめる瞳が少し切なそうに細められた。
 もしかして、エリザ様のことを思い出されて……彼女はまだ、エドワード様の心にいらっしゃるのかもしれない。

 ほんの少し寂しく感じつつ、そこに彼の優しいぬくもりも感じる。
 
「リリアナ、見てごらん」

 促されて外を見ると、見覚えのある通りに差し掛かった。職人通りだ。

「君を連れて行きたい場所が、もう一カ所あるんだ」
「……私を?」 
「気に入ってくれたら嬉しいんだけど」

 エドワード様がそういうのと、馬車が止まるのはほぼ同じだった。
 手を引かれて降りた先にあったのは銀細工の工房。パサージュへ向かう際、馬車の中から見て気になっていた場所だわ。
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