フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~

第8話 魔族令嬢の胸に輝く銀のブローチ

 手を引かれてくぐった扉の向こうは、不思議な空間だった。
 天井からたくさんの銀の飾りが下がっている。それらがくるくると回りながら、不思議な音色を奏でていた。

「殿下、お待ちしておりました」

 迎えてくれた女性は、奥の応接室へと私たちを案内してくれた。
 勧められるままソファーに腰を下ろすと、銀のティーセットが運ばれてきた。

 優しい紅茶の香りが広がる。
 ここはティールームではないわよね。なにをしに来たのかしら。

 不思議に思っていると、革の手袋と前掛けをした男性が現れた。その姿と顔は厳つく、輝く装飾品が美しいこの空間が恐ろしいほど似合わない。
 思わず身を強張らせると、エドワード様が小さく笑った。

「スミス、少しは愛想よくしたらどうだ? 妻が怯えてしまっている」
「申し訳ありません。この顔は生まれつきです」

 眉間にシワを寄せた男性、スミスさんが頭を下げた。

「──!? いいえ、怯えてなどおりません」
「ははっ、そうか? しかし、こんな不愛想な大男が出てくるとは思っていなかった。そうだろ?」
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