フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「……意地悪をいうために、ここに連れてきたのですか?」

 少しだけ癪に思ってそっぽを向くと、エドワード様は「機嫌を直してくれ」といった。

「機嫌を損ねるような、子どもっぽいことをおっしゃったのはエドワード様でしょ」
「違いない。悪かったよ、リリアナ」

 手がそっと握られた。
 私より年上なのに、子どもっぽい意地悪をいうこともあるのは意外だわ。それもすぐ謝るなんて。

 ちらっとエドワード様を見ると「拗ねたリリアナも可愛いな」と呟かれた。

「……そんなことをいうために、ここに来たのですか?」
「いいや、そうじゃないよ」

 ふふっと笑ったエドワード様の視線が、スミスさんへと向けられた。すると、彼は木箱を差し出した。それを「ありがとう」といって受け取った彼は、私に向き直る。

「君に渡したいものがある」

 開けられた箱に収められていたのは、美しいブローチだった。
 銀の薔薇に縁どられた赤い宝石がキラリと輝いている。よく見れば、エドワード様の胸元を飾るものと似ている。

「……これを、私に?」
「ああ、君のために作らせた」
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