フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 そういえば、エリザ様の話をした時も王城に悪魔が巣くうといっていたわ。
 魔物ではないというなら、もしかして、それは誰かの悪意なのかも──ふと、ヴィアトリス王妃の冷たい瞳がよぎった。

「……エドワード様、素敵な贈り物をありがとうございます。大切にします」
 
 ブローチに手を重ねて微笑めば、エドワード様はほっと安堵の吐息をついた。

 アルヴェリオン王城にはなにかがある。
 幸せそうなこの国に巣食うなにかと、エドワード様は戦っているのかもしれない。その手伝いが出来ればいいのだけど。

 胸に不安と緊張をよぎらせ、胸を飾るブローチに触れた。
 私にできることを探さないと。

「さて、そろそろ戻ろうか」

 立ち上がったエドワード様にエスコートされ、スミスさんに挨拶をすると工房を後にした。

 外へ出た直後、走ってきた子どもとぶつかった。

 よろめいた私はエドワード様に支えられたけど、子どもの小さな身体は投げ出され、その手から丸いガラス玉のようなものがバラバラと落ちた。
 直後、馬の嘶きが聞こえた。馬車が入って来たんだわ。
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