フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 乗ってきた馬車に乗り込み、そっと窓の外を見ると、騒ぎの中かけつけた母親らしい女性が子どもを抱きしめていた。
 ほっと安堵すると、馬車が動き出した。

「……あの子どもは、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろう。光玉が馬車の車輪で割れただけだ」
「光玉?」
「夜空に投げて割ると、綺麗な光の花が咲くんだ。誕生日パーティーなんかでよく使われるんだけどね」
「そうなのですね……それを壊したことを、怒られてないといいのですが」

 幼い頃、家にあった父のグラスを割ってしまい、お母様に凄く怒られたことをふと思い出した。

「怒られるかもしれないな」
「さっきの子は、私にぶつかって光玉を落としたのですから、それは可哀想すぎます」
「しかし、落とさぬよう袋に入れておくべきだった」
「……そうですが」

 至極当然の言葉に、少し寂しい思いをして俯くと、エドワード様は私の肩を抱いた。
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