フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 深く頭を下げたローレンスは「失礼します」といって立ち去ろうとした。

「ローレンス、もう一つ聞きたいのだが」
「なんでございましょう?」
「光玉の騒動で、あの母子を咎めたりしていないだろうな?」
「もちろんでございます。馬車の方も、車輪が割れておりましたが、その修理代を握らせ、事を大きくしないようガレスが話しをつけました」

 子どもを助けてすぐ、馬車へと駆けていった青年を思い出した。まだ若いがなかなか気骨のがある若者だ。

「ガレスに、見事な働きだったと伝えてくれ。これからも頼りにしていると」
「はい、殿下」

 頭を下げたローレンスは、再び「失礼します」といって、今度こそ部屋を出ていった。

 再び静かな部屋で一人となった。
 窓に歩み寄り闇夜を眺めていると、風が木々を震わせた。雲が流れ、冷たい月の光が差し込み、手元を照らした。
 月の光を受けたブローチが輝く。
 
「……リリアナ」

 必ず、私が守る。
 エリザのような目に、君を遭わせてなるものか。
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