フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~

第10話 魔族令嬢は、不可侵の森の悪魔に怯えてはいけない

 エドワード様から郊外の視察に行くからついてくるよういわれたのが、今から一週間前のこと。

 それから、ある地方を訪れた昨夜は王家の別邸に泊まった。一夜明けた今、私たちは馬車に揺られている。

 昨夜、はじめてエドワード様と枕を並べたことを思いだしながら、横に座る彼の様子をうかがった。

 いつもと変わらない静かな横顔だわ。

 私は昨夜、もしかして今夜ついに……と思ったのに。
 エドワード様は私の手を握ると真剣な面持ちで「明日、話したいことがある」と告げるだけで眠ってしまった。

 愛してもらえるなんて期待をしない方がいいのかしら。
 そうよ。痛い思いをするのは怖いし、なにもなかったことに少し安堵する気持ちだってある。それに、奥様がいらした殿方を満足させられるのか考えたら、自信なんてこれっぽっちもないわ。比べられたら……

 気付かれないように小さなため息をつき、窓の外へと視線を移した。

 夜伽の習わしを真面目に習えば良かった、なんて思う日が来るなんてね。
 ほんの少し羞恥に頬が熱くなった。
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