寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「ままのこと、助けてくれてありがとう!」
「ああ。どういたしまして」
「おじしゃんは、凄いひとね! ヒーローみたーい!」
夏希は私にきつく抱きしめられながら、己を助けた男性にきゃっきゃと笑い声を上げながら感謝を伝えている。
防護マスクを身に纏っている彼がどんな職種の人なのかは、すぐにわかった。
大好きで大切だった、お父さんと同じ職業。
大嫌いで、憎たらしいのに、関係を持ってしまった。
娘の父親と同じ消防士――。
「もう、逸れるなよ」
「うん!」
「あ、の……。ありがとう、ございました……」
「いや……」
彼は何かを言いたそうに言葉を濁したあと、ペコリと頭を下げて踵を返す。
――消防士の視界から外れたからか。
無意識のうちに感じていた緊張感が霧散し、頭の中で暴れ回る過去の光景がどこかに消え去る。
悲しい過去に苛まれる1人の女ではなく、母親としての意識がようやく戻ってきた。
私は夏希を抱きかかえたまま、ゆっくりと歩き出す。
「ああ。どういたしまして」
「おじしゃんは、凄いひとね! ヒーローみたーい!」
夏希は私にきつく抱きしめられながら、己を助けた男性にきゃっきゃと笑い声を上げながら感謝を伝えている。
防護マスクを身に纏っている彼がどんな職種の人なのかは、すぐにわかった。
大好きで大切だった、お父さんと同じ職業。
大嫌いで、憎たらしいのに、関係を持ってしまった。
娘の父親と同じ消防士――。
「もう、逸れるなよ」
「うん!」
「あ、の……。ありがとう、ございました……」
「いや……」
彼は何かを言いたそうに言葉を濁したあと、ペコリと頭を下げて踵を返す。
――消防士の視界から外れたからか。
無意識のうちに感じていた緊張感が霧散し、頭の中で暴れ回る過去の光景がどこかに消え去る。
悲しい過去に苛まれる1人の女ではなく、母親としての意識がようやく戻ってきた。
私は夏希を抱きかかえたまま、ゆっくりと歩き出す。