寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「食料品は、別のスーパーで買おうか」
「えー。しょーぼーしゃはー?」
「ここにずっといても、仕方ないでしょ?」
「やだー。もっと、おじしゃんの活躍がみたーい!」
「わがまま言わないの。邪魔になるから、帰ろうね」
「むぅ……」

 夏希は頬を膨れさせて苛立ちを隠せない様子でグズったが、彼女の望みを叶えてやる気にはなれなかった。
 こんなところにずっといたら、また私は1人の女に戻ってしまうような気がしたから……。

「今日は特別サービスだよ。お買い物に付き合ってくれたら、お菓子を買ってあげる」
「ほんと!?」
「うん」
「やったー!」

 アイスを買い与えた時と同じように、夏希は嬉しそうな声を上げる。

 ――いい子にしてたら、好きなものをあげる。
 こういうコントロールの仕方はあまりよくないとわかっていたが、緊急事態なのだからどうしようもない。
 幼子の興味関心が消防車からお菓子に移行したことを確認し、私は彼女を連れてスーパーへ移動した。
 もう二度と、火災現場になど居合わせませんようにと願いながら――。
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