寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「希美ちゃんも、こっちでゆっくりしたらどうだ」

 できれば彼に極力関わりたくなかったが、夏希の見ている前で夫の誘いを断れば不仲を疑われかねない。
 子どもの心の平穏を守るため、武彦さんにいだく憎悪を隠しながら2人に近づいた。

「疲れてるでしょ。寝なくていいの?」
「職場で仮眠を取った。問題ない。離れて過ごしていた分を、取り戻さなければ……」
「ぱぱ? おねむ? 一緒にお昼寝する?」
「俺に付き合ってくれるのか」
「いいよ! ぱぱとぎゅー、する!」

 彼の肩に乗る夏希は、夫の首筋に抱きついた。
 さすがにそのまま寝るわけにはいかないと考えたのだろう。
 一度はこちらの提案を断ったが、夏希が乗り気ならばと彼女を胸元へ抱きかかえ直してからごろりと床の上に転がる。

「ぱぱのおむね、かたーい!」
「夏希は、温かいな……。まるで、湯たんぽのようだ」
「ままも一緒に、おねむする?」
「私は家事をしなくちゃいけないから」

 彼と夫婦になってからは仕事を辞めたこともあって自由時間はかなり増えたが、家事からは逃れられない。
 洗濯物を干し、2人が夢の国に旅立っている間に昼食を作る必要がある。
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