寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「うん……」
「よかった! これからも、ずっとなかよしでいてね!」

 満面の笑みを浮かべて微笑む夏希に嘘をついているようで、胸がつきんと痛む。
 罪悪感をいだかなくても済むようになるためには、夫に対する好意を認める必要がある。

 ――彼のおかげで、生活は楽になった。
 ――お父さんが生きていたら、きっと孫娘ができたことを喜んでくれただろう。
 ――夫は私を、愛してくれている。

 いい事ずくめだ。
 彼を拒絶する理由などないのに、どうして私はまだその気持ちを認められずに尻込みしているのだろう……?

 その答えが出るまでは、自分から武彦さんが好きだと言う資格など自分にはない。
 そう考えた私は無言で彼と手を繋いだまま、愛娘を抱きしめた。
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