寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「わ、私……は……」

 突き放さなければと心の奥底で6年前の自分が叫んでいる。
 しかし――自分さえ譲歩すれば、誰もが幸せだと思えるような家庭を築けるのだと知ってしまったら、夏希のためにも意地を張ってはいられなくなってしまった。

 私は1人の女としてではなく、娘の幸せを第一に考えて生きるべきだ。
 逆恨みとしか思えない復讐は、6年かけて終わりを告げたのだから……。

「ん……。ぱぱ……。まま……?」
「夏希……」
「また、喧嘩してるの……?」

 夫の胸元で目を瞑って眠っていた夏希が、不安そうに声を発する。
 生まれた時から会ったことがなかった父親がある日突然やってきたかと思えば、母親と言い争っているのだ。
 その光景を目にしたら、自分の前からまた彼がいなくなってしまうのではないかと恐れるのは無理もない。
 夏希は私たちの手を小さな指先で掴むと、無理やり重ね合わせた。

「なかよく、して!」
「ああ……。驚かせてしまったな……。俺達は、いつだって仲良しだ」
「ほんと?」
「そうだよな。希美ちゃん」

 子どもの前では、険悪な姿など見せられない。
 有無を言わせぬ夫の言葉に思うところしかなかったが、私は渋々彼の言う通りにした。
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