寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「夏希は、パパに会えて嬉しい?」
「うん! あのね、ぱぱと暮らすようになってから、友達たくさん出来たの!」
「保育園……?」
「うん。まましかいないのは、かわいそうな子だからって。マリアちゃんしか、お友達になってくれなかったの……」

 夏希の口から語られる保育園の話には、いつだって友人のマリアちゃんがいた。
 しかし、彼女のご両親が再婚をしてからは夏希もその話をしなくなり、保育園に行くのを泣き叫んで嫌がる日が増えた。
 どうしてなのか、ずっと不思議だったけれど……。
 そういう事情があったのであれば、無理もない。

 ――武彦さんと結婚していなければ、今もなお夏希は保育園で仲間外れにされていたかもなんて、考えるだけでもゾッとする。

「でもね、今はもう平気だよ! 毎日、楽しい!」

 こちらの青白い顔を敏感に悟った夏希は、心底楽しくて仕方ないと言うようにぱっと表情を明るくさせた。

 ――子どもに気を遣わせるなんて、母親失格だと考えながら。
 私はついに、6年ぶりとなる実家に脚を踏み入れる。
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