そのストーカー行為、お断りいたします!
聞き慣れた声に、リズリットははっと瞳を見開くと声が聞こえた方へと視線を向けた。
その声を発した男性の周囲からは年若い令嬢達の色めき立った歓声がきゃあきゃあと上がり、離れた場所に居るリズリットの耳にまで届いているが、熱視線を向けられている当の本人であるその男性は視線など気にしていない様子でケロッとしており、リズリットしか見えていないように視線を真っ直ぐに向けてくる。
「ハウィンツお兄様……」
リズリットがか細く自分の兄の名前を呼ぶと、嬉しそうに瞳を細めて兄──ハウィンツがリズリットへと近付いて来て、リズリットの目の前に立ち止まる。
ハウィンツはリズリットに視線を向けると優しく瞳を細め、唇を開いた。
「リズリットが気になるような男性はいたかい? もし誰か気になる男が居れば教えてくれれば、俺がしっかりと調べてリズリットに相応しい人間かどうか確認するよ?」
「──いえっ、特に……その……誰も」
リズリットの言葉に、ハウィンツは流麗な眉をぴくり、と片方跳ねさせると訝しげに表情を顰めると低い声音でリズリットに尋ねる。
「誰、も……? まさかリズリットは誰にも話しかけられなかったのか? ダンスの誘いは? 可愛い俺の妹はずっと壁際に立って、このフロアに居たと言うのか?」
信じられない、と言うように口をポカンと開けてそう告げるハウィンツの言葉に、リズリットは益々恥ずかしく、萎縮してしまう。
兄や姉のように容姿端麗で頭脳明晰であれば、リズリットのようにぽつんと壁際に立ち竦む事など有り得ないだろう。
現に、今日の夜会でも兄ハウィンツは沢山の令嬢に囲まれ、常に人の輪の中心に居て、姉であるローズマリーは未だに沢山の令息達に囲まれ、秋波を送られている。
リズリットの元へ戻って来ようにも、次から次へと令息達からダンスの申し込みを受けていて中々こちらに進めないようだった。
「ハウィンツお兄様、ローズマリーお姉様を助けに行ってあげて下さい。このままでは、お姉様がこちらへ戻ってこれないわ……」
「だが……それではリズリットが」
リズリットをこの場に再び一人残して行くのを躊躇うように表情を曇らせたハウィンツを、リズリットはハウィンツの背中をぐいぐいと押してやりながら声を掛ける。
「ローズマリーお姉様も、今日は沢山ダンスを踊られて、足も限界だと思います。私はここでお待ちしているので、迎えに行って下さい」
「リズリットがそう言うなら……」
その声を発した男性の周囲からは年若い令嬢達の色めき立った歓声がきゃあきゃあと上がり、離れた場所に居るリズリットの耳にまで届いているが、熱視線を向けられている当の本人であるその男性は視線など気にしていない様子でケロッとしており、リズリットしか見えていないように視線を真っ直ぐに向けてくる。
「ハウィンツお兄様……」
リズリットがか細く自分の兄の名前を呼ぶと、嬉しそうに瞳を細めて兄──ハウィンツがリズリットへと近付いて来て、リズリットの目の前に立ち止まる。
ハウィンツはリズリットに視線を向けると優しく瞳を細め、唇を開いた。
「リズリットが気になるような男性はいたかい? もし誰か気になる男が居れば教えてくれれば、俺がしっかりと調べてリズリットに相応しい人間かどうか確認するよ?」
「──いえっ、特に……その……誰も」
リズリットの言葉に、ハウィンツは流麗な眉をぴくり、と片方跳ねさせると訝しげに表情を顰めると低い声音でリズリットに尋ねる。
「誰、も……? まさかリズリットは誰にも話しかけられなかったのか? ダンスの誘いは? 可愛い俺の妹はずっと壁際に立って、このフロアに居たと言うのか?」
信じられない、と言うように口をポカンと開けてそう告げるハウィンツの言葉に、リズリットは益々恥ずかしく、萎縮してしまう。
兄や姉のように容姿端麗で頭脳明晰であれば、リズリットのようにぽつんと壁際に立ち竦む事など有り得ないだろう。
現に、今日の夜会でも兄ハウィンツは沢山の令嬢に囲まれ、常に人の輪の中心に居て、姉であるローズマリーは未だに沢山の令息達に囲まれ、秋波を送られている。
リズリットの元へ戻って来ようにも、次から次へと令息達からダンスの申し込みを受けていて中々こちらに進めないようだった。
「ハウィンツお兄様、ローズマリーお姉様を助けに行ってあげて下さい。このままでは、お姉様がこちらへ戻ってこれないわ……」
「だが……それではリズリットが」
リズリットをこの場に再び一人残して行くのを躊躇うように表情を曇らせたハウィンツを、リズリットはハウィンツの背中をぐいぐいと押してやりながら声を掛ける。
「ローズマリーお姉様も、今日は沢山ダンスを踊られて、足も限界だと思います。私はここでお待ちしているので、迎えに行って下さい」
「リズリットがそう言うなら……」