それも、初恋。。
 朝の介助実習の時間も終盤に差し掛かり、ようやくみんなが一息つき始めた時「橘君、ちょっと」と佐藤さんに手招きされた。

「もうすぐ朝の介助実習の終了時間になるので、305号室にいる泉さんを呼びに行って貰えませんか?」


 305号室って、サクライさんの部屋かな。と考える。
 空調管理の行き届いた施設で生活していても、高齢者は夏バテしやすい。
 病気って程じゃないけど、食堂で食べるには元気が足りないような高齢者は部屋で食事をとることもあるので、サクライさんも今日はそんな感じなのかもしれないと思った。
 だから食堂ホールにいなかったのか。と、納得。

(まさか、手紙に悩みすぎて体調崩したとかじゃないよな)

 頑張ってくださいと安易に言ってしまったことをちょっと後悔しつつ、305号室のドアをノックする。

「橘です。開けていいですか?」
 外から声をかけたけど、しばらく待っても返事がなかった。

 305号室で合ってたよな、と首を傾げる。もう一度、さっきより大きな声で、今度は泉を呼んでみる。

「泉、いるか?」

 …………

「ポメ、開けるぞ~」

 …………

 全然返事がないので、引き戸を開いてみた。

「おーい、ポメー。そろそろ朝の実習終わる、けど……」
< 87 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop