恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?

 恥ずかしく思っていると、車を運転しながら氷上さんが話しかけて来る。

「美琴さん、映画は見る?」
「え?」
「俺、結構映画が好きで休みの日はよく見るんだ。美琴さんは、なにか好きなジャンルはあるかな、と」

 俺……!氷上さん、プライベートでは俺って言うんだ。
 いつも打ち合わせの時は私、と言っていた気がするからなんだか新鮮だ。

「美琴さん?」
「あ、すみませんっ」

 変なところに気を取られていたせいで、返事が遅くなってしまった。

「あっ、ご、ごめん……。ええと、映画ですよね、だよね。私も時々見る、よ。映画って勉強になることが多くて。話の作りとか。でも専ら恋愛映画ばかり見てしまっていて、ちょっと偏りがありすぎるかも……」

 私の返答に、氷上さんはにこにこと答える。

「さすが琴葉先生。勉強家だ」
「あっ、いえそういうわけじゃ……」
「今日からちょうど公開の映画があって、それを見ようと思ってるんだ。恋愛映画。いいかな?」
「う、うん、もちろん!」

 氷上さんは「よかった」とまた笑顔を浮かべる。
 小説家で在りながら、私はとても口下手だ。伝えたいことも思っていることも、上手く口にすることができない。だからこそ、それを小説という物語の中で伝えているということもあるのだけれど、そんな私の拙い言葉も取り零さないよう、氷上さんは私の言葉を待ってくれる。
 いいな、こういう人。口下手で全然面白いこと言えない私でも、話していいんだって言われてるみたいな、ちゃんと汲み取るよって言ってくれてるみたいな安心感がある。
 男性と付き合うってこんな感じなんだなぁ、なんて、しみじみと思ってしまう。
 それだけ私は男性と話さずに生きてきたのだ。

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