恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?
お昼の回の映画を観ていたせいで中途半端な時間になってしまったので、お昼ご飯はカフェで軽く済ませることにした。
どうやら晩ご飯はどこぞのお店を予約してくれているらしい。ただの小説のネタ出しのためだけにここまでしてもらって大変申し訳ない気持ちになる。
ディナーの時間までショッピングモールをぶらりと見たり、本屋さんで新刊をチェックしたりと、のんびり過ごした。
もしかしなくても、こんなふうにゆっくりと外出するのは久しぶりのことかもしれない。
いつも自宅に引きこもってばかりで、たまの外出は近所のスーパーくらい。いかんと思いつつも、家が一番執筆作業的にも捗るし、悩むことは多少あれども私は小説家という仕事が好きだった。
でもこうして外出してみると、やっぱり自宅にいるだけではわからないような、新鮮なものがたくさんある。
例えば、世間で流行っているファッションや、アイドル、小説のお話の傾向。街中に貼られているポスターや行列のできるスイーツ店。
そんなちょっとしたものを見ているだけで、ふとアイデアが浮かんだり、こういうもの自分も好きだなって、また書きたい方向性が決まったりと、小説家にとって外出は結構大事なことなんだなぁ、なんて当たり前のことに気付かされる。健康にもいいしね。
でもこうして楽しいなと感じたり、アイデアが浮かんだりするのは、もしかしたら隣にいる氷上さんのおかげなのかもしれない。
私が経験してこなかったデートを、わざわざ企画してくれた氷上さんのおかげだ。
男性とデートするって、こんな感じなんだなぁ。
きっと誰しもがもう知っているかもしれない、デートが楽しいという気持ちを私はようやく知った。
隣を歩く氷上さんを、ちらりと見上げる。
誰でもそう?氷上さんとのデートだから楽しいのかな……?
そんなことを思っていると、氷上さんがぱっとこちらに視線を向けた。
ただ目が合っただけだというのに、変に胸がドキッとした。
「美琴さん、ここだよ。今日の晩ご飯」
「晩ご飯」
なんだか家庭的な言葉が聞こえたものの、目の前にそびえ立つのは首が痛くなるほど高い、高層ビルだった。
「え、……ここ!?」
私がぽかんと上空を見上げていると、氷上さんがにこりと笑う。
「夜景の見えるレストランってやつです。デートの定番かなって」
氷上さんはそう言うと「さぁ、行こうか」と私の手を引っ張って行った。