恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?
しかしやはりと言うかなんと言うか、氷上さんとのデートのおかげで私の執筆は頗る順調に進んだ。
氷上さんとのデートで感じた気持ちを物語の主人公の気持ちに少し織り交ぜたりして、なんだか自分が今までしたことのない表現ができるようになったような気がした。
「氷上さん効果、恐るべし……」
現実の男性とデートするのと、妄想の中の男性とデートするのでは、大違いであることを知った。……とっても今更だけれど……。
「……氷上さんも、前よりも表現がいい、って褒めてくれたりするかな?」
氷上さんがにこりと穏やかな笑顔を浮かべて、私の文章を褒めてくれて、そうして優しく頭を撫でてくれるところを想像する。
「美琴さん、よくできましたね……なんて言ってくれてっ!!…………って!キモすぎるぞ私!!」
たくましすぎる妄想に、自分自身で嫌悪感を抱く。
いかんいかん。これだから恋愛未経験おひとり様女子は妄想力だけたくましくなっていかん。
えへへ、と緩んだ口元をきゅっと引き締めて、私はまたパソコンへと向き直る。
それでもやっぱり考えてしまうのは、氷上さんのことばかりだった。
「私のこと好きって言ってくれたけど……、本当にどこを好きになってくれたんだろう……」
担当小説家である私のやる気をただ単に出そうとしたおべっかかもしれないと言うのに、考えずにはいられなかった。
「さ!もうひと踏ん張り!」
私は自身の頬をぺちっと叩いてパソコンに向き直った。