恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?
「馬鹿みたい……本当に……」
翌日、私は机の上にだらっと力なく身体を載せ、溶けていた。
原因はもちろん、昨日の氷上さんと謎の美女である。
誰だったのだろう、あの人は。やはり氷上さんの本当の彼女とかだろうか。
だったとしたら、私を好きだと言ったことも、私と付き合おうと言ったことも、やはりただただ小説の執筆のためだけだったのだろうか。
「よかった、本気で好きになる前で……」
恋愛に耐性のない私は、氷上さんの言葉にころっと騙され、そのまま彼を好きになってしまうところだった。
氷上さんはきっと、私をからかったにすぎないのだ。
もしくは仕事のためだろう。自分が担当した作家の小説が売れないなんて、きっと編集長として顔が立たない。だから私を焚きつけるために、デートを計画してくれたり、好きだなんて甘い言葉を言ってくれたのかもしれない。
それにまんまと私は騙されたわけだ。
そう思う気持ち半分、実は昨日の美人さんは氷上さんのご兄妹や親族の方で、私の考えは全くの被害妄想。氷上さんが好きなのはやっぱり私で……。
なんてそこまで考えて、私はまた大きくため息をついた。
「そんなポジティブな考え、どうしたって受け入れられるわけないでしょ……」
恋愛未経験の陰キャな私では、どうしても前者としか考えられなかった。
「ほんと、好きになる前で良かったぁ……」
同じ言葉を繰り返した私の胸がズキンと痛む。
いや、気にしない気にしない。気にしては駄目。
私は、氷上さんのことなんて全然……。
「あー、なるほどなー、これは登場人物たちのもやもやの気持ちの心理描写の解像度上がるわー」
そう呟いている間に、今日も人の気も知らないで玄関のチャイムがピンポンと軽快に鳴った。