恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?
少しして、氷上さんが口を開く。
「美琴さん、聞いてください」
私は氷上さんの腕の中で、じっと耳を澄ます。
「俺、美琴さんに隠していたことがあります」
うん、知ってる。彼女のことですよね。
私は内心で相づちを打つ。
「俺は、実はSUNNY出版を継ぐことになっています」
………………ん?
氷上さんは私の予想だにしない言葉を紡ぎ出す。
SUNNY出版って、あのSUNNY出版?
SUNNY出版とは、出版業界の中でも大手も大手、出版企業と言えばSUNNY出版と言われるくらい大きな会社で知らない人はまずいないだろう。
継ぐって……、もしかして。
氷上さんは、大企業の御曹司!?
「この星屑出版にやってきたのは、父の会社であるSUNNY出版を継ぐための経験としてだったのですが、俺が美琴さんの本に感銘を受けたのは本当です。だからこそこの星屑出版で仕事をしてみたかった。それに貴女の書いた小説があったからこそ、俺は編集長にまでなることができたんです」
私は目を丸くして氷上さんを見上げる。
「美琴さんが見たのは、恐らく私の許嫁だった人です」
「……許嫁……」
「父が決めた相手ではありましたが、向こうに好きな人が出来、この話はもうとっくになくなっています。しかし小さい頃からの友人ではあるため、彼女は俺を弟のように思っているようで。ああいう行動は慎むようにいつも言っているのですが……」
「俺が好きなのは美琴さんですし」と言いながら、氷上さんは私の頬に伝った涙を優しく拭う。