恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?

「あああ……そんな大事な時期なのにわざわざ来ていただいてすみません……!」

 私が慌てて頭を下げると、恵さんは持ち前の明るさでからからと笑う。

「ああ、いえいえ、そんなことは全然いいんですよ!こうして琴葉先生とお話するの楽しいですし!」
「女神……!」

 私が恵さんの聖母のような対応に拝んでいると、恵さんは笑いながら話を続ける。

「それで、産休に入るので、しばらく担当は私ではなく他の者に代理をお願いしたのですが……」

 そっか。お休みに入るのだから、私の担当ももちろんしばらくの間お休みだ。
 ということは、新しい担当さんになるのか。
 私が恵さんの言葉を待っていると、恵さんは言いにくそうに言葉を紡いだ。

「琴葉先生の担当は女性の方がいいだろうなって探していたのですが、……すみません……」

 肩をがっくりと下げる恵さんに、私はさとってしまう。

「まさか、後任の担当さんは、……だ、男性……?」

 恐る恐る尋ねると、恵さんは渋々頷く。

「そうなんです。しかも、うちの編集長です」
「へ、編集長…………!?」

 後任の担当さんが男性というだけでも気が重いというのに、編集長が私の担当!?

「え、えー?何かの間違いじゃないんですか?私なんかの小説を、わざわざ編集長が担当だなんて……」

 現実逃避を始めた私に、恵さんはきっぱりと言った。

「いえ、本当です。編集長が、是非琴葉先生の小説を担当したい、と」

 私は目を丸くしてぽかんとするしかない。

 私の担当が、男性で、しかも編集長……?

 私がお世話になっている星屑出版株式会社は、大手ほどではないにしろ、近年ぐんぐんと成長を遂げている出版社だ。
 私はそのブルーベリー文庫というレーベルから恋愛小説を出してもらっている。
 編集長、とはそのブルーベリー文庫の編集長だろうか?

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