恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?
「琴葉先生は男性が苦手だからとお伝えしたのですが、どうしてもと……」
「そ、そうですか……」
正直なところ、今からでも変更可能ならば是非とも担当さんを変更してほしい!
けれどいつもお世話になっているレーベルの編集長さんに、そんな強気なことが言えるはずもない……。
「わ、わかり、ました……」
渋々そう返答する私。
そんな私の様子に恵さんは心配そうな表情を浮かべていた。
「琴葉先生、何かあったら連絡してください!執筆に支障をきたすようでは、元も子もないですし!」
「あ、ありがとうございます……」
とは言いつつも、お子さんが生まれようとしていて大変な恵さんには、なるべく迷惑を掛けたくない。ただでさえきっとストレスや大変なことが多いというのに、こんな不出来な28歳児に構ってもらうなど、出来ようはずもなかった。
「近々ご挨拶に伺うと言っていたので、お手数ですがよろしくお願いしますね」
そう言って恵さんは、最後まで私を心配そうに見つめて帰っていった。
パタンと閉まる玄関扉を見つめてから、私はその場にしゃがみ込む。
「一難去って、また一難……!!」
次回作のプロットは恵さんのおかげでなんとか書けそうではあるけれど、その恵さんとしばらく会えないうえ、まさか後任の担当さんが男性だなんて……。
編集長とは、当然ながら顔を合わせたことはない。
謝恩会などもあるそうだけれど、引きこもりの私は全く参加したことがなくご挨拶したことがなかった。
「琴葉先生のファンで真剣に考えてくれる人、だとは、恵さんも言ってくれたけれど……」
もちろんその仕事ぶりを心配しているのでは全くない。
私が心配しているのは、私が男性と向かい合ってちゃんと話ができるか、である。
「何にしても、憂鬱すぎる……っ!」
自分なんかの担当が編集長で、男性で。気が重いことこの上ない。
「とりあえずプロット……進めよう……」
こういうとき、現実逃避にちょうどいいのが小説の執筆であった。
小説のことを考えていれば、現実を忘れられる。
そう、自分が恋愛したことがなかったとしても、小説の中であれば恋愛をした気にだってなれるのだ。
私は作業部屋へと戻ると、先程打ち合わせで話し合った内容を元にプロットを作成し始めた。