恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?
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新作の恋愛小説のプロットが完成した翌日。
さっそく新しい担当さんが打ち合わせに来てくれることになり、前日の晩はほとんど眠れなかった。
「憂鬱……憂鬱……とっても憂鬱……」
朝からこの単語ばかりを呟き続ける私は、刻一刻と迫る打ち合わせの時間が一生来ませんようにと願いながら、時計を見つめる。
しかしいくら願ったからと言って、その針が止まることはなく、時間はいつもと同じように平等にその時を刻んでいた。
そして、午後1時30分ちょうど。
ピンポーンと軽快な音を家中に響かせ、玄関のチャイムが来訪を告げた。
「うわぁ、うわぁ、ついに来ちゃったよ……。どうしよう……居留守とか使えないかな……」
足掻いたところでなんの意味もないことはわかっている。
だってきっと私が引きこもり気質だってことくらい、恵さんは伝えているはず。
伝えている、といえばどこまで?
きっと次回作はこんな方向でいきたいと、先日の打ち合わせのまとめは新担当さんにも伝えられているはず。
他には?
私が男性が苦手なことはきっと知っている。
では、私が全くの恋愛未経験恋愛小説家であることは?
これは恵さんでもきっと知らなかったはず。
となれば、新担当さんも知らないはず。
「……よしよし、舐められないように気丈に振る舞うんだ、美琴!28歳しごでき恋愛小説家っぽい雰囲気でいくぞ……!」
いつまでもチャイムを無視することはできない。
「すみません、お待ちください」とだけ告げて、私は持っている中でも一番品よく見えるワンピースを身に着けた。
しごでき恋愛小説家、しごでき恋愛小説家!と脳内で言い聞かせながら、私は慌てて玄関に向かう。
「お、お待たせしてすみませんっ……」
前髪を整えながら玄関の扉を開けると、そこに立っていた人物を見て私は思わずフリーズした。