死亡エンドを回避していたら、狂愛キャラが究極のスパダリになってしまいました!?
『乙愛』はクレアに想いを寄せる誠実ヒーローアイザックと、クレアをどんな手を使っても手に入れようとする狂愛キャラシルヴァン。
そして二人から好かれるクレアの三角関係という構図になっていた。
(どんな手を使っても……そう、その手っていうのが言わずもがな私ことエリザ!)
メインカップルの恋路を事ある毎に邪魔するのが悪女エリザだけれど、その裏を掌握し、クレアとアイザックに付き纏う障害を起こす主犯格がシルヴァンである。
シルヴァンに気に入られたいがために色々と動いていたエリザは、最終的に使えないと判断されてあっさり殺されてしまうのだ。
(しかもシルヴァンが最後にエリザに言い放ったセリフが……)
『――俺に振り向いて欲しかった? ああ、本当に残念だよ。俺の心を奪えなかった、お前が悪いんだから』
(って……なんて最低なクソ男! でもインパクト強すぎて一言一句覚えているのが悔しいいい……!)
ようやく前世の記憶の整理もついてきて、この世界が『乙愛』の中だと知り先のシナリオを思い出せたものの、状況は最悪だった。
メイドに確認した情報から計算すると、今はシナリオ本編が始まるだいたい約半年前。
そして最悪な状況というのは、すでに私とシルヴァンが婚約関係になってしまっているということだった。
(だからタイミング最悪って思わず言っちゃったけど、本当にまずい……)
前世を思い出したおかげで今の私はシルヴァンに盲目的に惚れていないとはいえ、クレアが絡んだ結果どんな風に転ぶかが全くわからない。
婚約者になってしまった時点で、予測不可能な死亡エンドのフラグが立っているかもしれないのだ。
(ひとまず、死にたくないわ。死ぬのだけは絶対に避けたい)
結局のところこれに尽きる。誰だって命は落としたくない。
そのためにはどうすればいいのかを思案した。
(単純な結論だけれど、シルヴァンと距離を置けばいいのよね。いっそ物語のキャラとして早々に離脱させてもらえればいいのだけど。でもすでに婚約関係にはなっているわけで……)
ああ、どうしてもっと早く前世を思い出せなかったのだろう。お父様が婚約を検討する前なら、もう少しやりようはあったはずなのに。
「お嬢様……エリザお嬢様」
悶々と頭を悩ませていると、メイドがそばにやってくる。
紅茶を手渡してくれるのかと思いきや、その顔は焦りを浮かべていた。
「どうかしたの?」
「それが……キンスト小公爵がお嬢様の見舞いにいらしたとのことです」
「キン……え、シルヴァン、様が!?」
呼び捨てにしそうなところを寸前で様付けし、それはもう私は声を荒らげた。