死亡エンドを回避していたら、狂愛キャラが究極のスパダリになってしまいました!?
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「わざわざお越しくださりありがとうございます」
突然の来訪だけど待たせるわけにもいかず、私は寝着の上からショールを羽織ってシルヴァンを出迎えた。
「こちらこそ、配慮が足りなくてすまなかったね。君が目を覚ましたと報せを受けてすぐに訪ねてしまって」
ベッドの横に備え付けた椅子に座るシルヴァンは、その麗しい美顔を私に向けてくる。
(うわあ、本当に本物のシルヴァンだ。婚約式の記憶は多少あるけれど、改めて見るととんでもなく美形だな)
指通りの良さそうな白銀の髪と、ルビーをそのまま嵌め込んだような真っ赤な瞳。美しく中性的な顔立ちながらも衣服の上からわかる引き締まった体躯。
さすがヒーローアイザックに匹敵するキャラ。只者ではない雰囲気がありありと伝わってくる。
「それで、身体の調子はどうだい? 頭を強く打ったとティフェス侯が心配しておられたけど、無事で本当によかった」
シルヴァンは安堵と心配そうな表情を半々にしてこちらを覗き込んでくる。
しかし、その瞳は随分と冷ややかなものだった。
朧気に残る婚約式の記憶でもそうだけど、シルヴァンは私に興味がないのだ。
(本心ではどうでもいいと思っていそうな目。それもそうか、この婚約自体当主同士が決めたもので、シルヴァンの本意ではないんだから)
でも、そのほうが私としてはやりやすい。
「ええ、頭は問題はありません。どちらかというと、背中の傷のほうが痛みまして……」
「背中?」
「……実は、五針ほど縫ったそうです」
私は気まずさを装って、ふいと肩に手を添える。
婚姻前の貴族の娘が傷を負った。それも跡に残るほどのものを。この世界で傷が残ることは婚姻に大きく左右され、不利になる場合が多かった。
最悪の場合――婚約解消も視野に入れられるほどに。
(最悪どころか私にとっては最高! 禍を転じて福と為すとはこのことね。怪我を言い訳に婚約に対しても後ろ向きな発言をすれば、シルヴァンの頭にも解消の文字が浮かぶはず)
もしかしたら小説のキャラとして知っているシルヴァンと、現実のシルヴァンとでは性格に差異があるかもしれない。
そこまで狂気的な一面はないのかもしれない……そう思っていたりもしたけれど、彼を前にしてすぐに確信してしまった。
(絶対に、この人は私の手に負えない。もう、オーラがこんなにも出てますから!)
転生者特権なのかなんなのか、当たらずともこの直感には従った方がいいと、私の心が訴えている。
(そりゃ世間一般的な感想を述べるならシルヴァンはとんでもないイケメンだけど。だからって今の私は彼を目の前にしても盲目に好きだとは思っていないし、執着心もない)
やっぱり死なないためには、シルヴァンを避けて通るのが一番現実的だという考えに落ち着いた。
「小公爵様」
「……、うん?」
シルヴァンはぴくりと片眉を動かす。
耳を傾けると、彼の片方の耳朶に垂れるピアスが揺れた。