呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
Chapter4

第28話 夜の城に響く悪戯の足音

 夜が深まる頃、ベルティーナは城の中を全力で駆け回っていた。

「やーいやーい! お姫様ののろま!」

 ──悔しかったら捕まえて!
 なんて続けざまに戯けた調子で言うのは、先日の森林火災で重傷を負っていた幼い子どもたちだった。

 双子の侍女と同じような猫の耳にふわふわの尻尾。少しばかり目が釣り上がっており、いかにもやんちゃそうな風貌の少年だった。

 その周りには角を持つ子どもや、翼を持つ子どもと、姿形も違う数人の子どもたちがおり、追いかけるベルティーナを見て何やらわいわいと騒いでいた。

「お待ちなさい!」

 それを追いかけるベルティーナは、お仕着せのエプロンドレスの裾をつまみ、さらに走り込んだ。

 ──あの森林火災から二週間近くが経とうとしている。ベルティーナの治療のおかげもあってか、重傷者たちはものの二週間ほどでほとんどが完治した。

 魔性の者たちの身体は頑丈だ。それでいて回復も早い。
 だが通常、重度ともなれば痛みが引くまでに二ヶ月近くの時間はかかるそうで、治療でここまで回復が早いことに誰もが皆驚いていた。

 傷口を清潔に保ち、じゅくじゅくとした箇所には蜂蜜を軟膏代わりに塗るという、随分と原初的な方法ではあるが……これが恐ろしいほどに効いてしまったのだ。

 皆回復に向かっていることは心底良かったと思えるが……かなりの範囲を焼失したため、収容された負傷者のほとんどが現在帰る家を失ってしまった。
 結果、復興までは城の空き部屋で過ごすようにと女王が定めたが、ベルティーナは今現在非常に困窮していた。

 毎日のように負傷者の面倒を見ていたことから、すっかり皆と顔なじみになったものだが……運ばれてきた子どもたちに翻弄される日々を送っていたのである。

 やはり、人間が珍しいのだろう。自分たちより身体能力が劣ると見抜いた途端にこの有様である。
 幸いにも治療こそしっかりと受けてくれるものだが……想像を絶するほどに子どもというものは元気が良すぎたのだ。

 昨日は髪飾りを奪われた。そして今日はスカートの中に潜り込まれ……気がつけば追いかけっこになっていた。

 無礼にもほどがある。そうは思うが、こんな小さな子どもを相手に、ベルティーナは本気で怒る気にはなれなかった。

「……本当に逃げ足が早くて困るわ」

< 128 / 164 >

この作品をシェア

pagetop