呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 あんな小さな子が自分に? そんなことは考えたこともない。だが、気を引きたいからこそからかう点は身に覚えがある。他の件で心当たりがありすぎたのだ。

 それを連想できる人物はただ一人だけ……。

「何、キスされたいの?」「一緒のベッドで寝たい」と……今まで言われたミランの言葉と彼の顔を思い起こしてしまい、ベルティーナの頬はぽっと赤く染まった。

 思えばあの後、森林火災の後始末の仕事に追われているせいで、二週間近くミランに会ってもいない。
 部屋は隣り合っているのだから、明け方に物音が聞こえることから戻ってきたことは分かっているが、それでも彼は自分のところに来なかった。

 きっと疲れているのだろうとは思うし、自分も自分でやることが山積みのようにあった。
 だからこそ、自分も彼に会いに行くような真似はしなかっただが……。

「元気かしらね……最近、部屋にも来てくれないんですもの。疲れてるのは分かってるけど」

 ──少しだけ寂しいじゃない、なんてぼんやりとしていて、思わず口に出してしまったが、もう時はすでに遅かった。
 慌ててベルティーナがぱっとハンナの方を向くと、彼女は目を丸くしてベルティーナの方をじっと見つめていたのだ。

「あ、その……違っ!」

 ベルティーナは慌てて弁解するが、ハンナはすぐににやりと唇に弧を描いた。

「あらら……悪戯っ子の話から、ミラン王子のことを思い出しちゃったんですか?」
「べ、別に違うわよ!」

 ぴしゃりと反論するが、顔面が熱いことから顔が紅潮しているのだと自覚できる。
 しかも、あの発言だ。それに適合する人物など一人しかいないもので……図星もいいところすぎる。
 もうこれ以上、言っても仕方ないだろう、と悟ったベルティーナは大きなため息をこぼして、じとりとハンナを睨み据えた。

「今のは聞かなかったことにしてちょうだい。貴女の言う通り、私も多分疲れてるのよ」
「そうですね。だから、私がこれを置いてきたらすぐに部屋に戻りましょう? それより、ベルティーナ様、顔真っ赤ですよ?」

 ──どうしたんです? なんてわざとらしく続けざまに言われるものだから、ベルティーナはむっと目を細める。

「……うるさいわね、分かってるわよ」
「顔真っ赤にされて、ベラドンナじゃなくてイチゴみたい。ベルティーナ様、今とっても可愛いですよ?」
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