呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
「どうして……どうして周りにあんな馬鹿みたいな嘘をついたの!」

 剣幕にベルティーナが切り出すなり、ミランは目を丸く開く。

「……私は生まれて間もないときから貴方のものになるって決まっていた! それだって認めていた。なのに、あんな嘘をついて、しきたりを破って、あんなことをしなくても私は逃げたりしないのに。だって、だって……」

 ──貴方がそばにいてくれるでしょう……私をもう二度と孤独になんてさせないんでしょう!
 甲高い金切り声を上げてベルティーナが叫んだそのときだった。

 打たれた腹を摩りながら起き上がったミランは緩やかにベルティーナに近づき、ベルティーナを抱き寄せたのである。

「ちょっと! 私、本気で怒ってるのよ!」

 ベルティーナが怒鳴って捲し立てるものだが、ミランはそれでもベルティーナを離そうとはしなかった。

「俺だってな。不安に思うことくらいある。事実、ベルはヴェルメブルグを滅ぼすだの、そんな気持ちがあって、向こうの世界に行きそうになった。その前に阿呆な小悪党に攫われかけたりもした。俺は口下手だし、どうすれば繋ぎ止められるか色々考えた」

 静かに語り始めた彼に、ベルティーナは腰から生やした蔦を縮めて彼の方を向く。
 その表情はあまりにも真摯でありながら、少しばかり申し訳なさそうだった。
 まさか、そんな不安そうな表情をしているとは思わず、ベルティーナは少しばかりぎょっとして彼に目をやった。

「だから、何としてでも自分のものにしたかった。ベルのことは何があろうが離さないと誓ってるが、もしも俺が母さんに負ければきっと無理だ。だから離れないように……いいや、負けないためにあんな嘘をついてお前を閉じ込めた。嘘をついてベルの安否さえ伝えず周りを騙したのは謝る……」

 彼の打ち明けた心の内。それは、リーヌが憶測したものと、同じだった。

 怒り、憎悪、悲しみ、喜び、そして愛おしさ──と、いたたまれないほどの感情が暴れ回る。だが、一拍も経たぬうちに「馬鹿!」と憎まれ口を一つ叩いて、ベルティーナは彼の胸に飛び込んだ。

 その瞬間だった。
 闘技場にはどっと夥しい歓声が響き渡り、新国王──とミランの名が幾つもこだました。

 だが、その中には王妃──! と自分の名を呼ぶものがいくつか聞こえてくる。
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