転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 名前は三沢カリナ。
 年齢は、十八歳。本当は二十三歳だけど、どうせバレっこないからサバよんじゃった。
 日本という国から、アブラッハの庭に異世界転移してきた。
 なぜそんなことになったのかは、漫画の中でも説明されていなかったからわからない。

 一通り質問が終わってから、私はヘンリック以外の三人の逆ハーレム構成員のことを尋ねてみた。
 
 そして、四人全員が漫画の設定とはまったく違う現状になっていることを知らされ、また頭を抱えた。

 亡くした婚約者の面影を引きずっているはずの第一王子コンラートは、幸せな新婚生活を満喫している。

 魔物に襲われ負傷したことで体が不自由になっただけでなく不能になっているはずのエッカルト・アンゼルム大公は、今も元気に浮名を流している。

 アンゼルム大公と同じ時に魔物に襲われ死亡したはずの総騎士団長も現役続行中で、逆ハーレム構成員になるはずの総騎士団長の息子ディーターは遠方で武者修行中なのだそうだ。
 ディーターは突然父を亡くした上に総騎士団長を受け継ぐことになり、その重責に押しつぶされそうになっているはずなのに!

「おまえが言っていることは、全部デタラメじゃないか」

 呆れた顔でため息をつく尋問官のおじさんを、私は睨みつけた。

 アブラッハと逆ハーレム構成員の四人が存在しているのだから、ここはあの漫画の世界で間違いないはずだ。
 それなのに、なんでこんなにもシナリオと異なる流れになっているのだろう。

「そろそろ、アブラッハの庭に侵入した経路とか目的とか、そういうのを話してくれないか」

「だから、それは異世界転移したからだって何度も言ったじゃない!」

「あくまでも、そう言い張るんだな?」

「だって本当のことだもの。
 理由も原因も知らないわよ!」

 おじさんはメモをとっていたファイルを手に立ち上がると、そのまま立ち去ろうとした。

「ちょっと! どこ行くのよ!」
 
 嫌な予感がして呼び止めると、おじさんは半目で振り返った。

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