森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「じ、ジークヴァルト様」
突然の抱擁に、リーゼロッテの鼓動が跳ねあがった。上ずった声で名前を呼ぶも、抱きしめる腕に力が入る。
「ああ、よかったです。なかなかいらっしゃらないから、野良狼にでも食べられてしまったのかと思いましたよ」
第三者の声にびくりとなった。恐る恐る振り返る。隠すように抱かれた状態で、フードを被ったその人物は、リーゼロッテからはよく見えなかった。
「何者だ」
「これは失礼を。ボクはシルヴィ・ファル。この森の番人です」
「番人? そんな者がいるとは聞いていない」
警戒したように言う。背に回された手のひらから、ジークヴァルトの緊張が伝わってきた。
「そう言われましても、証明のしようがありませんね。強いて言うなら、この森の中にいるというのが証でしょうか」
リーゼロッテを腕にしたまま動かないでいるジークヴァルトを前に、シルヴィと名乗った青年はフードの首を傾けた。
「これは困りましたね。危険な物は何も持っていませんし、何でしたら今ここで裸になってみせましょうか? 清らかな乙女には少々目の毒でしょうが、致し方ありません」
「いや、いい。そこまでする必要はない」
ためらいなく上着に手をかけようとしたシルヴィを、眉間にしわを寄せてジークヴァルトは制した。
「ヴァルト様……わたくし、この方は信用していいように思いますわ」
「……そうか」
シルヴィからは悪い気は感じられない。この神聖な森に平然としていられるのだ。探る視線はそのままに、ジークヴァルトは少しだけ警戒を解いた。
「ああ、よかった。ここへはおふたりをお迎えに上がったんですよ。魔女のいる館まで徒歩で行くには今の時期は寒すぎます。そりを待たせてありますので、ボクについて来てください」
シルヴィが背を向け歩き出す。リーゼロッテを抱え上げると、少し距離を取りながらジークヴァルトはそれに続いた。状況が状況だけにおとなしく運ばれるしかない。首筋に手を回して、リーゼロッテは進む先に目を凝らした。
突然の抱擁に、リーゼロッテの鼓動が跳ねあがった。上ずった声で名前を呼ぶも、抱きしめる腕に力が入る。
「ああ、よかったです。なかなかいらっしゃらないから、野良狼にでも食べられてしまったのかと思いましたよ」
第三者の声にびくりとなった。恐る恐る振り返る。隠すように抱かれた状態で、フードを被ったその人物は、リーゼロッテからはよく見えなかった。
「何者だ」
「これは失礼を。ボクはシルヴィ・ファル。この森の番人です」
「番人? そんな者がいるとは聞いていない」
警戒したように言う。背に回された手のひらから、ジークヴァルトの緊張が伝わってきた。
「そう言われましても、証明のしようがありませんね。強いて言うなら、この森の中にいるというのが証でしょうか」
リーゼロッテを腕にしたまま動かないでいるジークヴァルトを前に、シルヴィと名乗った青年はフードの首を傾けた。
「これは困りましたね。危険な物は何も持っていませんし、何でしたら今ここで裸になってみせましょうか? 清らかな乙女には少々目の毒でしょうが、致し方ありません」
「いや、いい。そこまでする必要はない」
ためらいなく上着に手をかけようとしたシルヴィを、眉間にしわを寄せてジークヴァルトは制した。
「ヴァルト様……わたくし、この方は信用していいように思いますわ」
「……そうか」
シルヴィからは悪い気は感じられない。この神聖な森に平然としていられるのだ。探る視線はそのままに、ジークヴァルトは少しだけ警戒を解いた。
「ああ、よかった。ここへはおふたりをお迎えに上がったんですよ。魔女のいる館まで徒歩で行くには今の時期は寒すぎます。そりを待たせてありますので、ボクについて来てください」
シルヴィが背を向け歩き出す。リーゼロッテを抱え上げると、少し距離を取りながらジークヴァルトはそれに続いた。状況が状況だけにおとなしく運ばれるしかない。首筋に手を回して、リーゼロッテは進む先に目を凝らした。