森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
頑丈そうな扉はゆっくりと開かれた。身構えて礼を取ろうとする。しかし目の前に現れたのは、白いローブを着た世話係の可愛らしい少女だった。自分よりも幼く見える少女を前に、リーゼロッテは大きく目をしばたたかせた。
「待っていたわ。どうぞ入って」
背を向けた少女が奥へと引っ込んでいく。改めて気を引き締め、ジークヴァルトとともに扉をくぐった。
玄関を入るとすぐの場所で、シェパードに似た大型犬が行儀よくお座りをしていた。やさしげな瞳で、リーゼロッテに向けてぱたぱたと尾を振ってくる。
脇を過ぎ少女を追うと、後ろから低いうなり声が聞こえてきた。驚いてジークヴァルトにしがみつくも、犬は扉に向かって威嚇をしていた。その先にいたのは、続こうとしていたシルヴィだ。鼻先にしわを寄せ、じりじりと扉の外に追いやっていく。
「わたしが客人を連れてきたんですよ!? 今日くらい入れてくれたっていいじゃないですか!」
その瞬間、犬が物凄い剣幕で吠えだした。
「シンシア! 会うのは三年と百五十七日ぶりなんですよ? 頼まれた薬草を届けたって、声すら聞かせてくれないじゃないですか。ちょっと冷たすぎると思いませんか? ボクは断固抗議します!」
奥に向かってそう叫ぶも、誰からも返事は来ない。おろおろして見守る中、犬がシルヴィめがけて飛びかかった。
寸でのところで回避したシルヴィは、そのまま扉から締め出されてしまった。犬は器用に閂を降ろすと、扉に向かって土をかける仕草をする。
外から扉が叩かれる音を聞きながら、ジークヴァルトに促されて奥へと進んだ。穏やかな顔つきに戻った犬が、尾を振りながらふたりのあとをついてくる。今から魔女とご対面だ。気を取り直して背筋を正した。
奥の部屋には出迎えた少女だけが待っていた。魔女はまだ来ていないようだ。大きな暖炉のある部屋はとても暖かくて、急にコートが重たくなってくる。
「そのままでは暑いでしょう? 上着は脱ぐといいわ」
少女の言葉にジークヴァルトがリーゼロッテのコートを脱がせ始める。屈みこんで前ボタンをはずされていると、子どものころに戻った気分になった。
「あ、服に色が……」
着せられた衣裳が鮮やかな緑色に染まっている。見やるとジークヴァルトが着ているものも、綺麗に青みを帯びていた。
「あんなに真っ白だったのに」
「それは守り石と同様で、着た者の力を映すのよ。でもこの短時間でそこまで濃く染めるなんて……さすが星読みの末裔ね」
「あの……その星読みの末裔とは、一体なんなのでしょうか」
「待っていたわ。どうぞ入って」
背を向けた少女が奥へと引っ込んでいく。改めて気を引き締め、ジークヴァルトとともに扉をくぐった。
玄関を入るとすぐの場所で、シェパードに似た大型犬が行儀よくお座りをしていた。やさしげな瞳で、リーゼロッテに向けてぱたぱたと尾を振ってくる。
脇を過ぎ少女を追うと、後ろから低いうなり声が聞こえてきた。驚いてジークヴァルトにしがみつくも、犬は扉に向かって威嚇をしていた。その先にいたのは、続こうとしていたシルヴィだ。鼻先にしわを寄せ、じりじりと扉の外に追いやっていく。
「わたしが客人を連れてきたんですよ!? 今日くらい入れてくれたっていいじゃないですか!」
その瞬間、犬が物凄い剣幕で吠えだした。
「シンシア! 会うのは三年と百五十七日ぶりなんですよ? 頼まれた薬草を届けたって、声すら聞かせてくれないじゃないですか。ちょっと冷たすぎると思いませんか? ボクは断固抗議します!」
奥に向かってそう叫ぶも、誰からも返事は来ない。おろおろして見守る中、犬がシルヴィめがけて飛びかかった。
寸でのところで回避したシルヴィは、そのまま扉から締め出されてしまった。犬は器用に閂を降ろすと、扉に向かって土をかける仕草をする。
外から扉が叩かれる音を聞きながら、ジークヴァルトに促されて奥へと進んだ。穏やかな顔つきに戻った犬が、尾を振りながらふたりのあとをついてくる。今から魔女とご対面だ。気を取り直して背筋を正した。
奥の部屋には出迎えた少女だけが待っていた。魔女はまだ来ていないようだ。大きな暖炉のある部屋はとても暖かくて、急にコートが重たくなってくる。
「そのままでは暑いでしょう? 上着は脱ぐといいわ」
少女の言葉にジークヴァルトがリーゼロッテのコートを脱がせ始める。屈みこんで前ボタンをはずされていると、子どものころに戻った気分になった。
「あ、服に色が……」
着せられた衣裳が鮮やかな緑色に染まっている。見やるとジークヴァルトが着ているものも、綺麗に青みを帯びていた。
「あんなに真っ白だったのに」
「それは守り石と同様で、着た者の力を映すのよ。でもこの短時間でそこまで濃く染めるなんて……さすが星読みの末裔ね」
「あの……その星読みの末裔とは、一体なんなのでしょうか」