森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
時折自分に対して使われる言葉だ。公爵家の書庫で調べてみても、答えは何も見つからなかった。
「龍と星読みの王女の話は知っているでしょう? その王女の末裔ということよ」
「ですがあれは童話で……」
星読みの王女とは、この国で子どもの読み聞かせに使われる、もっとも有名な童話に出てくる人物だ。国におきた厄災を収めるために、神である青龍の元へ身を捧げる王女の設定だった。
「世では作り話ということになっているわね」
小瓶の砂をひとつかみすると、少女はそれを暖炉の中へと振りまいた。途端にオレンジ色の炎が、青銀色に舞い踊る。
「今がちょうど真満月ね。いいわ。青き者の神事だけ先にやってしまいましょう」
ジークヴァルトを振り返ると、暖炉の前に立つように指示してくる。いよいよ魔女のお出ましか。身構えるも、それらしい人物はやってこない。
慣れた手つきで少女は準備を進めている。邪魔をして悪いと思いつつ、挨拶のタイミングを確かめたくて、ローブの背中に問いかけた。
「あの……シネヴァの森の巫女様はどちらにいらっしゃるのですか?」
「ああ、挨拶が遅れてしまったわね」
手を止めて少女が振り返る。
「わたしはシンシア。森の鎮守を任されたシネヴァの巫女よ」
「あなたが森の魔女……!?」
叫んだ後に失礼な物言いだと気づく。青ざめて慌てて礼を取った。
「わたくし不敬なことを」
「いいのよ。王女だったのはもう昔のこと。そんなにかしこまらなくていいわ。それにしてもわたしのことは聞いていなかったの?」
「巫女様はクリスティーナ様の高祖伯母でいらっしゃるとだけ……」
普通に考えて百歳は越えていそうな年齢だ。会えば魔女と言われる理由が分かる。この少女を前にして、クリスティーナの言葉の意味をようやく理解した。
「龍と星読みの王女の話は知っているでしょう? その王女の末裔ということよ」
「ですがあれは童話で……」
星読みの王女とは、この国で子どもの読み聞かせに使われる、もっとも有名な童話に出てくる人物だ。国におきた厄災を収めるために、神である青龍の元へ身を捧げる王女の設定だった。
「世では作り話ということになっているわね」
小瓶の砂をひとつかみすると、少女はそれを暖炉の中へと振りまいた。途端にオレンジ色の炎が、青銀色に舞い踊る。
「今がちょうど真満月ね。いいわ。青き者の神事だけ先にやってしまいましょう」
ジークヴァルトを振り返ると、暖炉の前に立つように指示してくる。いよいよ魔女のお出ましか。身構えるも、それらしい人物はやってこない。
慣れた手つきで少女は準備を進めている。邪魔をして悪いと思いつつ、挨拶のタイミングを確かめたくて、ローブの背中に問いかけた。
「あの……シネヴァの森の巫女様はどちらにいらっしゃるのですか?」
「ああ、挨拶が遅れてしまったわね」
手を止めて少女が振り返る。
「わたしはシンシア。森の鎮守を任されたシネヴァの巫女よ」
「あなたが森の魔女……!?」
叫んだ後に失礼な物言いだと気づく。青ざめて慌てて礼を取った。
「わたくし不敬なことを」
「いいのよ。王女だったのはもう昔のこと。そんなにかしこまらなくていいわ。それにしてもわたしのことは聞いていなかったの?」
「巫女様はクリスティーナ様の高祖伯母でいらっしゃるとだけ……」
普通に考えて百歳は越えていそうな年齢だ。会えば魔女と言われる理由が分かる。この少女を前にして、クリスティーナの言葉の意味をようやく理解した。