森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
 そのヨハンがニコラウスと対峙した。
 普段は気はやさしいが、ヨハンは剣を持つと豪胆な戦士に変わる。力任せで振り下ろされる大剣に、ばったばったと何人もの近衛騎士が打ち負かされていた。

 対してニコラウスは砦の騎士の中でも細身な体つきだ。だが騎士団総司令のバルバナス直属とあって、その剣技には定評があった。

 周囲の騎士たちがふたりの試合に注目している。パワープレーヤーのヨハン対(わざ)のニコラウス。激しい攻防の末、勝負はニコラウスに軍配が上がった。

 おお、とどよめきが漏れる中、ニコラウスは令嬢たちをどや顔で振り返った。しかし令嬢たちはこちらには目もくれず、すぐ横で行われていたエーミールの勝利に、黄色い声援を送っている。

「難敵を倒したって言うのに……」

 トホホな顔で、ニコラウスは次の試合へと進んだ。

「次はお前か、ニコラウス」
「エーミール様、手加減なしでお願いしますよ」
「当然だ。お前こそ手を抜くなよ」

 お互いの実力は、今までの手合わせで把握済みだ。今のところ五分(ごぶ)の戦歴に、今度こそ勝利すると、ふたりは息まいた。

 体格は似たり寄ったりで、隠れ細マッチョなニコラウスの方がやや有利な状態だ。剣技はエーミール優勢と言ったところで、双方引かずなかなか勝負がつかなかった。

 令嬢たちの声はエーミールの名しか発しない。ニコラウスと言えば、野太い声援が送られるばかりだ。

「モテたい男の執念、なめんなよっ!」

 渾身の一撃が手首に決まり、エーミールの剣が弾かれた。

「くそっ!」
「よっしゃーーーーっ!」

 剣を掲げニコラウスがどや顔で振り返る。途端に令嬢たちから大ブーイングを浴びせられた。

「うっう、勝ったのにどうして……」
「いい試合だった。次こそは負けんぞ」

 騎士道にならって礼で締める。泣きながらニコラウスはさらに次の試合に進んだ。

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