森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
 次の試合相手はマテアスだった。騎士に(まぎ)れてマテアスはひとり、体術のみで戦っている。

「ブラル様、どうぞご遠慮なく。(あるじ)の命令でしぶしぶやって参りましたが、やるからにはこちらも全力で行かせていただきます」
「望むところだ!」

 ニコラウスの見たところ、マテアスは先手必勝のタイプだ。長剣を振るう騎士相手には、(ふところ)に飛び込んで瞬殺するのが手っ取り早い。
 初発の一撃をかわすと、ニコラウスはすかさず剣を繰り出した。低い姿勢で(かわ)され、お互い再び距離を取る。

「さすがはブラル様。一筋縄では参りませんね」
生憎(あいにく)とこっちも実戦慣れしてるんでね」

 騎士同士の手合わせばかりしている近衛隊とは違うのだ。にやりと笑うと剣を振り上げ、ニコラウスは再びマテアスに迫った。

「わたしも旦那様相手に毎朝死ぬ思いをしておりますから」

 ふっと目の前からマテアスが掻き消えた、かと思うと背後の耳元で囁かれる。首筋にひたりと当たった短剣の刃に、ニコラウスは迷わず降参のポーズを決めた。

「失礼。飛び道具(これくらい)はハンデということでご容赦(ようしゃ)ください」

 短剣をしまうと、ニコラウスの前でマテアスは優雅に礼を取った。

 ジークヴァルトは順当に勝ち進み、決勝戦相手が決まるのを待つのみだ。その対戦相手を決める準決勝は、マテアスとキュプカー隊長で行われることとなった。

「おもしろい、君とは一度、手合わせしてみたかった」
「恐縮でございます」

 開始と共にマテアスが動く。それを何なく(かわ)して、キュプカーの立て続けの斬撃(ざんげき)が炸裂する。
 騎士たちから感嘆の声が上がった。キュプカーもいい年だが、その腕が衰えている様子はない。若かりし頃は「連撃のブルーノ」として、同期の騎士たちから恐れられる存在だった。

 さすがのマテアスも追い詰められて、反撃の手を塞がれる。これが実戦なら毒矢でも繰り出すところだが、手合わせでそこまでする理由が見つからない。あっさり負けを認め、キュプカーの勝利で準決勝は幕を閉じた。

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