森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
 ラウラに言われた小路を進む。来た石畳とは違う方向だ。それでもジークヴァルトといれば不安はなかった。無事に神事を終えた安堵もあって、足取りはとても軽やかだ。

「夢のような光景でしたわね。神事があんなにも美しいものだったなんて」
「そうだな」

 あの幻想的な神事の様子は、一生忘れられないと思う。一部とはいえ自分も役割を(にな)ったのだ。今も互いの耳に輝く守り石に、なんだかくすぐったい気持ちになった。

「ザスとメアの託宣の誓い……もしかして、ザスとはヴァルト様のミドルネームなのですか?」
「ああ。龍から託宣を受けた者は、みな託宣名を持っている」
「託宣名……そうだったのですね」

 貴族ならば全員が、ミドルネームを持つものだと思っていた。小さいころに自分のミドルネームはメアだとリーゼロッテは教わった。それは誰彼なく知られてはいけない大切なものだと、そう教えてくれたのは誰だったろうか。

 ふと視線を感じて笑顔を返す。せっかくジークヴァルトとふたりきりなのだ。束の間のこの時間を、もっと有効に過ごさなくては。

「ジークヴァルト様のお供とは言え、神事に(たずさ)われてわたくし本当にうれしいです」
「そうか」
「王命を受けなければ、こうしてヴァルト様と旅に出ることもなかったでしょうから、ハインリヒ王には本当に感謝ですわ」

 弾んだ声で見上げると、ジークヴァルトはちょっとむっとした顔をした。移動中、ジークヴァルトはずっと書類仕事を続けていた。やはり自分は旅のお荷物となっているのかもしれない。

「ヴァルト様……帰りの道中はお仕事の邪魔をしないよう、わたくし気をつけますわ」
「そんなことを気にする必要はない」
「ですがわたくしのせいで、気が散ってしまいますでしょう?」

 心配性のジークヴァルトは、いつだって自分を最優先にしてくれる。大切にしてくれるのはうれしいが、寄りかかり切りなのは頂けない。

「いい。帰りは執務をするつもりはない。余計な気は回すな」
「でも大丈夫なのですか?」
「ああ、急ぎの仕事などそうはないからな」

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