森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
 その割に今までの道中の仕事ぶりは、精力的だったように思う。だが帰りは旅を楽しむ気でいるのだ。神事を無事にこなした今、ジークヴァルトも重圧から解放されたのかもしれない。
 そう思うとリーゼロッテの心は大きく弾んだ。今度こそ、ふたりで旅を満喫できるのだ。

 小路を行く中、木々の向こう、遠くに屋根が見えてくる。時間を気にせずゆったり歩いているせいか、なかなか建物に近づかない。ふと歩く両脇に積もる新雪が目が入った。

「ヴァルト様……わたくし、昔からやってみたいことがありましたの」

 足を止め、ふんわりとした雪の絨毯(じゅうたん)をしげしげと見やる。ジークヴァルトの手を離れ、リーゼロッテはその新雪の上に、背中から勢いよくダイブした。

「何のつもりだ」

 驚いたジークヴァルトが寸でのところで抱きとめる。踏み込んだふたり分の足跡で、美しい雪化粧は台無しとなっていた。

「もう、ヴァルト様。手を出したらいけませんわ」

 ぷくと頬を膨らませ、リーゼロッテは新たによさげな新雪の場所まで移動する。

「大丈夫ですから、そのまま見ていてくださいませ」

 リーゼロッテは雪の布団の上に、再びえいっと大の字で背を沈ませた。今度はうまくいったようだ。満足げな顔のまま広げた両の手と足を、何度も大きくスライドさせていく。
 手足の雪がかき分けられると、リーゼロッテはゆっくりと身を起こした。つけた跡を乱さないように、そうっと慎重に立ち上がる。

 ジークヴァルトに手を取られ、リーゼロッテはぴょんと雪の中から脱出した。振り返ると綺麗に人型ができている。リーゼロッテひとり分の大きさだ。

「ふふふ、雪の妖精ですわ。子どものころから、ずっとやってみたかったんですの」

 どや顔でジークヴァルトを見やるも、困惑顔で反応はいまいちだ。いたずら心が湧いてきて、リーゼロッテは大きな手を引っ張っていく。少し離れた新雪の前で、ジークヴァルトを向かい合わせで立ち止まらせる。

< 127 / 185 >

この作品をシェア

pagetop