森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「ヴァルト様もやってみてくださいませ」

 背伸びをして軽く両肩を押す。なんの抵抗もなくジークヴァルトは、雪の絨毯に真っすぐぼすんと倒れていった。

「そのまま手と足をこうですわ」

 広げた手をばたばたして見せて、動かすように促した。言われるがままジークヴァルトは、長い手足で雪をかき分けていく。

「そうしたら起き上がってくださいませ。あっ、つけた跡を崩してはいけませんわよ。そうっと、そうっとですわ」

 前のめりに指示を出す。リーゼロッテの指令通りに、ジークヴァルトはうまいこと雪から立ち上がった。

 リーゼロッテが作った妖精の横に、大きな妖精ができ上がる。雪男のような跡を見て、おかしくて思わず吹き出した。並ぶふたりの妖精は、まるで仲良く手をつないでいるようだ。

「ヴァルト様は随分とのっぽの妖精ですわね」
「ああ」

 やさしい手つきで髪の雪をはらわれて、リーゼロッテははっと我に返った。ジークヴァルトも雪まみれになっている。とても淑女の行いでないことに、今さらながらに気がついた。

「わたくしったら、子どもみたいにはしゃいでしまって……」
「問題ない。お前がたのしければそれでいい」

 慈しむように言われ、ぼっと頬が赤く染まった。口下手な癖に物言いはいつもストレートだ。不意打ちをくらってばかりのリーゼロッテは、動揺を悟られないように熱い頬を手のひらで覆った。

「このままでは風邪を引く」

 言うなり子供抱きに抱え上げられる。無言のまま進むジークヴァルトの腕の中、リーゼロッテはおとなしくしあわせを噛みしめた。

< 128 / 185 >

この作品をシェア

pagetop