森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「さぁ、決勝戦だ。副隊長と本気でやり合うのは久しぶりだな」
「……」

 無言のままジークヴァルトはリーゼロッテに視線を向けた。エマニュエルとヤスミンに挟まれて、涙目で祈る様な瞳で見つめ返してくる。
 頷いて、キュプカーに向き直った。双方礼を取り、決勝戦が開始される。

 お互い何戦もこなしてきた身だ。若い分だけジークヴァルトの方が優勢だった。ジークヴァルトは剣技もスピードもパワーも兼ね備えた万能型プレイヤーだ。息の上がってきたキュプカーの斬撃を跳ねのけ、その喉元に剣先を突き付けた。

「参った。オレの負けだ」

 騎士たちと令嬢たちの歓声が同時に上がる。大盛り上がりの中、手合わせトーナメントはジークヴァルトが勝利を収めた。

「しかし上位者にほぼ近衛騎士がいないなど……普段の鍛え方が甘かったな」

 キュプカーのつぶやきに、周囲にいた騎士たちに戦慄(せんりつ)が走る。隊長にスイッチが入ると地獄を見ると言うのが共通の認識だ。みなはそそくさと休憩しに遠くへ逃げていった。

「お父様、残念でしたわね」
「ヤスミンか」
「今日も差し入れを持ってきましたのよ。騎士のみな様と召し上がって……あら、今日はどなたも取りにこられないのね」

 いつもだったら群がるように差し入れに飛びつく騎士たちが、今日は遠巻きにこちらを見守っている。

「ジークヴァルト様、お怪我はございませんか?」
「ああ、問題ない」

 すぐ横で見つめ合うふたりに、ヤスミンは「相変わらずお熱いですこと」と言ってふふと笑った。

「ヤスミン……あまり失礼を言うんじゃないぞ」
「分かっておりますわ。ですが、あちこちおもしろいことになっておりますもの。これを見逃す手はございませんわ」

 ヤスミンの視線の向こうで、エラが興奮気味にマテアスと会話をしている。そのふたりを遠巻きに、エーミールが複雑そうな顔で見つめていた。

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