森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
(なんだかヴァルト様、緊張してる……?)
きつく引き結ばれた唇に、刻まれた眉間のしわもいつも以上に深かった。自分を膝に抱えた状態で、ジークヴァルトは暖炉の中の揺れる炎を見つめている。薪が爆ぜる音だけが響く中、リーゼロッテは場が和む話題を探そうとした。
「あ……」
「どうした?」
「いえ、何でもありませんわ」
ふとフルーツ盛りの中に、季節外れのビョウを見つけた。ビョウはリンゴそっくりの赤い果実だ。神殿でかじった、固くて酸っぱいビョウが思い出された。今となっては苦い思い出だが、あのビョウがこの命をつないでくれたのもまた事実だった。
「いちビョウあれば怪我知らず、三ビョウあれば風邪知らず、十ビョウあれば寿命が延びる……」
市井で唄われるわらべ歌を、なんとはなしに口ずさんだ。ふっと視界に大きな手が入りこむと、頬包まれジークヴァルトへと顔を向けさせられた。
青い瞳と見つめ合ったまま、長い指が頬を滑っていく。顎下まで降りてきた指先は、そこで一度動きを止めた。
くいと顎をすくわれて、少しだけ顔を上向かされる。伏し目がちのジークヴァルトの顔が、傾けられながらゆっくりと近づいてきた。
(あれ……? キス、されるのかな……?)
瞳を閉じて、間を置かずやわらかいものが唇に触れた。すぐに離れたのを感じとって、そっと瞼を開けてみる。
「――……っ!」
まだ目の前にあったジークヴァルトの顔に驚くも、うなじに回った手で逃げられない。目を見開いたまま今度は性急に口づけられた。ピントのぼやけた青い瞳に、慌てて再び目をつむる。
ちゅっちゅと何度も啄ばまれ、力が抜けるのに時間はかからなかった。体も思考も何もかもが、甘い熱にゆっくりと溶かされていく。跳ねた心臓だけは裏腹で、いつまでも鳴りやまない鼓動が耳についた。
(これが何度目のキスかしら……)
ぼんやりと今までの口づけを数えてみる。初夏の夜会での初めてのキス。執務室で交わした机越しの熱い口づけ。東宮でのキスも唐突だった。囚われの神殿では、幾度口づけただろうか。
(唇が離れないままのキスは、何回でカウントするのかな……)
世の恋人たちはどうしているのだろう。そんな考えも、やがては思考の奥底へと沈んでいった。
きつく引き結ばれた唇に、刻まれた眉間のしわもいつも以上に深かった。自分を膝に抱えた状態で、ジークヴァルトは暖炉の中の揺れる炎を見つめている。薪が爆ぜる音だけが響く中、リーゼロッテは場が和む話題を探そうとした。
「あ……」
「どうした?」
「いえ、何でもありませんわ」
ふとフルーツ盛りの中に、季節外れのビョウを見つけた。ビョウはリンゴそっくりの赤い果実だ。神殿でかじった、固くて酸っぱいビョウが思い出された。今となっては苦い思い出だが、あのビョウがこの命をつないでくれたのもまた事実だった。
「いちビョウあれば怪我知らず、三ビョウあれば風邪知らず、十ビョウあれば寿命が延びる……」
市井で唄われるわらべ歌を、なんとはなしに口ずさんだ。ふっと視界に大きな手が入りこむと、頬包まれジークヴァルトへと顔を向けさせられた。
青い瞳と見つめ合ったまま、長い指が頬を滑っていく。顎下まで降りてきた指先は、そこで一度動きを止めた。
くいと顎をすくわれて、少しだけ顔を上向かされる。伏し目がちのジークヴァルトの顔が、傾けられながらゆっくりと近づいてきた。
(あれ……? キス、されるのかな……?)
瞳を閉じて、間を置かずやわらかいものが唇に触れた。すぐに離れたのを感じとって、そっと瞼を開けてみる。
「――……っ!」
まだ目の前にあったジークヴァルトの顔に驚くも、うなじに回った手で逃げられない。目を見開いたまま今度は性急に口づけられた。ピントのぼやけた青い瞳に、慌てて再び目をつむる。
ちゅっちゅと何度も啄ばまれ、力が抜けるのに時間はかからなかった。体も思考も何もかもが、甘い熱にゆっくりと溶かされていく。跳ねた心臓だけは裏腹で、いつまでも鳴りやまない鼓動が耳についた。
(これが何度目のキスかしら……)
ぼんやりと今までの口づけを数えてみる。初夏の夜会での初めてのキス。執務室で交わした机越しの熱い口づけ。東宮でのキスも唐突だった。囚われの神殿では、幾度口づけただろうか。
(唇が離れないままのキスは、何回でカウントするのかな……)
世の恋人たちはどうしているのだろう。そんな考えも、やがては思考の奥底へと沈んでいった。