森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
(ここ、ヴァルト様の気配がする……)

 前もって部屋に守り石を施してあると言っていた。

「ふふ……ヴァルト様って本当に過保護なんだから……」

 耳につけられた守り石からも、ジークヴァルトの気が常に感じられる。泉の神事で交わしたものだ。あれこそがふたりの婚姻のしるしであったのだと、今さらながらにそんなことを思った。

 耳に青の波動を感じながら瞳を閉じる。ジークヴァルトもまた、自分の気配を感じてくれているのだろうか。

「早く戻ってこないかな……」

 そう呟いて、リーゼロッテはすぅっと眠りについた。

 ぎしりと寝台が傾いたのを感じて、リーゼロッテは薄く(まぶた)を開いた。焦点が合わないまま、温かい何かに包まれる。

「ヴァルトさま……?」
「起こしたか? いい、そのまま眠っていろ」

 やさしく頭を撫でられて、心地よさに思わず微笑んだ。胸元にすり寄って、再びまどろみに落ちていく。

「あまり可愛いことをするな。我慢できなくなる」

 そう言ってこめかみに落とされた口づけは、自分の夢だったのかもしれない。

 満たされて、大きな腕の中、リーゼロッテは朝までぐっすりと眠った。

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