森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
 広い吹き抜けの広間に入ると、カツカツと反響する足音が聞こえてきた。

「リーゼロッテ、久しぶりだな! これはまた随分と大きくなって!」
「ジークフリート様、ご無沙汰しております」

 颯爽と現れたジークフリートに、礼を取る暇もなくいきなり高く持ち上げられる。脇に手を入れられて、そのままぐるんぐるんと振り回された。

「はっはっは! 元気にしていたか? 大きくなったのに相変わらず小さくて軽いな。ちゃんと食べてるか? いっぱい食べないと大きくなれないんだぞぉ?」
「えっ、あっ、はいっ、あのっ」

 遠心力でスカートが広がって、足先が遠くに引っ張られていく。景色がぐるぐる回って、気持ち悪くなりそうな一歩手前で、ジークフリートに子供抱きに抱え直された。

「でもやっぱり大きくなったなぁ。ラウエンシュタイン城まで会いに行った日のことを覚えているか? あの日リーゼロッテはこぉんなに小さくってなぁ」

 指で五センチほどの長さを示す。いや、さすがにそんなには小さくないだろう。そう突っ込みたくても、回った目が判断能力を鈍らせる。

 しがみついた先にある顔は、思い出の中のジークフリートと同じだ。年は経ているもののやさしげな青い瞳は、あの日のリーゼロッテの記憶のままだった。

「フリート、そのくらいになさい。怒らせる前に降ろさないと、憤死寸前よ」

 女性の声と共に、リーゼロッテはジークヴァルトの腕に素早く(さら)われた。そのまま横抱きに抱え上げられて、あわてて首すじにしがみつく。

「お、なんだ、ディートリンデ。リーゼロッテ相手に、嫉妬のあまり憤死しそうなのか? 可愛いな! 心配しなくてもオレが愛しているのはリンデだけだぞぉ!」
「馬鹿言わないで。憤死しそうなのはわたしたちの息子の方よ」

 リーゼロッテが手を離れると、ジークフリートは迷いなくその女性を抱え上げた。彼女こそがジークヴァルトの母親だ。初めの印象がその後の関係を左右する。リーゼロッテに緊張が走った。
 挨拶のために礼を取ろうとするも、ジークヴァルトに抱え上げられたままだ。降ろすよう小声で訴えるが、逆に強く抱きしめ返された。

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