森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「ジークヴァルトのこと、よろしく頼むわね。不愛想で分かりにくい子だけれど……あの子にはあなたしかいないの」
「はい、ディートリンデ様。わたくしにもジークヴァルト様しかおりませんから」
「そう……ありがとう、リーゼロッテ」

 挨拶に行くまでの緊張が嘘のようだ。ディートリンデとほほ笑み合って、しばらくの間、談笑を続けた。

「最後に大事なことを伝えておくわ。龍に目隠しされて、わたしたちはあなたに多くを語れない。でもね、同じ託宣を受けた者には、一度だけ龍は目隠しを取ることを許すのよ」
「同じ託宣を受けた者……?」
「あなたはわたしと同じ、龍の盾の伴侶となる託宣を受けた。だから一度だけなら制限を受けることなく、わたしの口からあなたに伝えることができるの。何を話すのかわたしが選び取るよりも、あなたが知りたいことを伝えたいと思って」
「わたくしが知りたいこと……」
「ええ、龍の託宣にまつわること。マルグリット様に関することでもいいし、ジークヴァルトのことでもいいわ。わたしが知り得ることなら話せるから」

 少し考えてみたが、今のところ何も思いつかない。慌てて聞くよりも、時間をかけて吟味したほうがよさそうだ。

「……今すぐは思い浮かびませんので、知りたいことができたらその時はお願いできますか?」
「もちろんよ。いつでも言ってちょうだい」
「ディートリンデ! そろそろもういいんじゃないか!? オレはリンデがいなくてさみしいぞぉ!」

 そんな話をしているときに、焦れた様子でジークフリートが部屋に飛び込んできた。便乗するようにジークヴァルトもやってくる。

「……もうひとつ言い忘れていたわ。いいこと、リーゼロッテ。もしもジークヴァルトがしつこい時は、容赦なく部屋から叩き出しなさい。対の託宣を受けた男どもは、野放しにすると手がつけられないほど増長していくわ。腹にすえかねたら一年くらい口をきかなければ、それで聞き分けよくなるから。よぉく覚えておくといいわ」

 一年はさすがに長いのでは。そう思ったものの、今までロッテンマイヤーさんの言うことに間違いはなかった。この教えを(しか)と胸に刻んでおこうと、リーゼロッテは神妙に頷いた。

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