森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「何が可笑(おか)しい?」
「……この剣でクリスティーナ様が……はっ、はは、ははは……!」

 この剣に貫かれ、王女は()った。王女を守るため、日々己が磨き上げてきたこの剣でーー

 そう思うと笑いが止まらなかった。王女は最期(さいご)までともに()った。死するその瞬間に、自分はクリスティーナとともに在れたのだ。

 笑いながら、頬に熱い雫がとめどなく流れた。王女の背を見送ったあの日から、初めて流した涙だった。

「ちっ、話にならねぇ」

 いつまでも泣きながら笑っているアルベルトから、バルバナスは乱暴に手を離した。打ち付けられた体もそのままに、床に転がり狂ったように笑い続ける。
 舌打ちをしてバルバナスが出て行ったあとも、アルベルトは天井を見上げ薄ら笑っていた。騎士に引きずられ、元いた部屋へと戻される。

 そこでも(こら)えきれずに笑いを漏らした。薄暗い部屋で片膝を抱えるその様に、給仕にきた女官が悲鳴を上げる。
 逃げるように女官が去ると、食事のにおいが鼻をついた。そうだ、自分は生きなければならない。最後にクリスティーナから受けた(めい)を、この名にかけて守ると誓ったのだから。

 アルベルトは湯気の上がる料理を(むさぼ)り食べた。久しぶりのまともな食事に、弱った胃が悲鳴を上げる。吐きそうになっても無理やり飲み込んだ。まだやらねばならないことがある。ただその一心で。

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