森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
◇
苛立ちながら進む廊下で、それでもエラの姿を探す自分がいた。屋敷を巡回するときの癖のようなものだった。だが今会ったとして、一体何を言えばいいというのか。
(エラの口から結婚の真偽を確かめるか……?)
だが一度それで失敗している上に、プライドの高いエーミールに、そんなことができるはずもない。
山積みのリネンを乗せたワゴンを押す少女が三人、向かいからにぎやかにやってくる。耳をそばだてるまでもなく、かしましい会話が耳に届いた。
「ねぇねぇ、聞いた? エラ様、ご懐妊って話」
「え、もう? マテアス仕事が早い!」
「正式には誰も聞いてないんだけど、最近お腹に手を当てて、頻繁に気にするそぶりをしてるって話」
「ああそれ、赤ちゃんいるっぽい!」
「でしょー。侍女長になったばかりでエラ様大丈夫かな? うちらもしっかりフォローしたげないと」
「うんうん。少しでも負担減らしたげないと!」
「エラ様似の子だといいなぁ」
「ねー! マテアスに似てたら糸目になっちゃう!」
「あ、しっ! グレーデン様よ!」
「ほんとだ! 戻られてたのね」
「いいから黙って黙って……」
少女たちは慌てて廊下の脇に避けた。エーミールが通り過ぎるまで、頭を下げて礼を取る。
平静を装って歩くので精いっぱいだった。エラが懐妊した。しかもマテアスの子をだ。誰もいなくなった場所で足を止める。動揺でおかしくなっていることを自覚しながらも、エーミールはここに来た本来の目的をどうにかこうにか思い出した。
しかしこの精神状態のままでは、到底ジークヴァルトの前に出られそうもない。執務室に行けば、当然マテアスもそこにいる。そんな状況で、自分は平然と挨拶などできるだろうか。
じりじりと後退し、エーミールは来た廊下を速足で戻りはじめた。
(まずはグレーデン家に顔を出すのが先だ)
ジークヴァルトへの婚姻の祝いの品も、部屋に置いたままだった。あとで家の者に届けさせよう。そう思っていたにもかかわらず、エーミールは言い訳のように侯爵家へと向かった。
苛立ちながら進む廊下で、それでもエラの姿を探す自分がいた。屋敷を巡回するときの癖のようなものだった。だが今会ったとして、一体何を言えばいいというのか。
(エラの口から結婚の真偽を確かめるか……?)
だが一度それで失敗している上に、プライドの高いエーミールに、そんなことができるはずもない。
山積みのリネンを乗せたワゴンを押す少女が三人、向かいからにぎやかにやってくる。耳をそばだてるまでもなく、かしましい会話が耳に届いた。
「ねぇねぇ、聞いた? エラ様、ご懐妊って話」
「え、もう? マテアス仕事が早い!」
「正式には誰も聞いてないんだけど、最近お腹に手を当てて、頻繁に気にするそぶりをしてるって話」
「ああそれ、赤ちゃんいるっぽい!」
「でしょー。侍女長になったばかりでエラ様大丈夫かな? うちらもしっかりフォローしたげないと」
「うんうん。少しでも負担減らしたげないと!」
「エラ様似の子だといいなぁ」
「ねー! マテアスに似てたら糸目になっちゃう!」
「あ、しっ! グレーデン様よ!」
「ほんとだ! 戻られてたのね」
「いいから黙って黙って……」
少女たちは慌てて廊下の脇に避けた。エーミールが通り過ぎるまで、頭を下げて礼を取る。
平静を装って歩くので精いっぱいだった。エラが懐妊した。しかもマテアスの子をだ。誰もいなくなった場所で足を止める。動揺でおかしくなっていることを自覚しながらも、エーミールはここに来た本来の目的をどうにかこうにか思い出した。
しかしこの精神状態のままでは、到底ジークヴァルトの前に出られそうもない。執務室に行けば、当然マテアスもそこにいる。そんな状況で、自分は平然と挨拶などできるだろうか。
じりじりと後退し、エーミールは来た廊下を速足で戻りはじめた。
(まずはグレーデン家に顔を出すのが先だ)
ジークヴァルトへの婚姻の祝いの品も、部屋に置いたままだった。あとで家の者に届けさせよう。そう思っていたにもかかわらず、エーミールは言い訳のように侯爵家へと向かった。